繊維業分野におけるJASTI監査の実地立会い報告
特定技能制度を活用して繊維業分野で外国人材を受け入れる場合、同分野にのみ求められる「上乗せ4要件」の一つとして、「国際的な人権基準に基づく認証」の取得が必要とされています。この認証を取得するための要件として、第三者による監査制度が設けられており、その一つがJASTI監査です。詳細は、バックナンバーをご参照ください。
〔バックナンバー〕
▶特定技能制度の工業製品製造業分野 ― 追加された業種の手続き開始!(ECO-NEWS Vol.040/2025.1.17 配信)
https://eco.coop/archives/posteconews-article/7292
▶繊維業の上乗せ4要件に新たな体制 ― 監査要綱「JASTI」が始動(ECO-NEWS Vol.041/2025.5.15 配信)
https://eco.coop/archives/posteconews-article/7460
今回、組合員企業3社のご協力を得て、JASTIの実地監査に立ち会いました。本記事では、実際の監査の流れや、実務上とくに留意すべきポイントについて報告します。
■監査を実施した組合員企業と認定監査機関
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組合員企業名 |
認定監査機関名 |
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艶清興業株式会社 |
一般財団法人ケケン試験認証センター(JWIF) |
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大垣扶桑紡績株式会社 |
一般財団法人カケンテストセンター(KAKEN) |
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カワボウ繊維株式会社 |
一般財団法人日本繊維製品品質技術センター(QTEC) |
JASTI監査の概要と判定基準
JASTI監査は「雇用環境」に焦点を当て、労働時間・賃金管理・福利厚生・教育体制などについて、特定技能制度との整合性を重視して確認する実務的な監査となっています。監査では、9分野・84項目にわたり、問題の有無が確認されます。各項目には、あらかじめ重要度が設定されており、指摘内容やその件数に応じて総合判定が行われます。なお、監査結果は、監査当日または後日、通知されます。
■各項目の重要度(9分野・84項目)
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MN:Minor/マイナー(軽微) |
軽微な項目。継続的な改善が必要。 |
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MJ:Major/メジャー(重要) |
重要項目。次回監査までの改善が必要。 |
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ZT:Zero Tolerance/ゼロトレランス(許容不可) |
即時改善が必要な重大不適合。 1項目でも該当する場合、総合判定は「判定なし」となります。 |
■総合判定(3段階)
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A判定 |
2年後に更新が必要 |
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1年後に更新が必要 |
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JASTI監査の実施内容と主な確認事項
当組合が立ち会った3社ともに、監査は概ね以下の項目で実施されました(順序は監査機関により前後します)。
1.管理者ヒアリング
2.書類確認
3.従業員インタビュー
4.工場内確認
5.寮内確認
以下、それぞれの内容を簡潔にまとめます。
1.管理者ヒアリング
管理者へのヒアリングでは、口頭での質疑応答を中心に、必要に応じて関連書類の確認が行われました。
〔主な確認事項〕
・人権方針の明確化
(児童労働、強制労働、結社の自由と団体交渉、差別、安全衛生について ※ホームページや就業規則への明記)
・懲戒規定の有無と周知状況
・労災発生の有無と届出状況
・人事評価制度、評価基準の有無
・女性に対する業務制限の有無
・身分証明書や貴重品の預かり行為の有無
2.書類確認
書類は帳簿・記録類を中心に、労務管理が適切に行われているかを確認されます。
〔主な確認事項〕
・雇用契約書、労働条件通知書
・労基署提出書類(36協定、会社カレンダー等)
・出勤記録簿(直近1年分)
・賃金台帳・給与明細
・健康診断記録(要再検査時の医師意見含む)
・宿舎規定
・建物関連資料(建築物確認通知書等)
・衛生管理者、防火管理者資格証
・消防計画、避難訓練記録(年1回以上)
3.従業員インタビュー
代表者は席を外したうえで、監査人と対象となる従業員のみで実施され、個別面談または少人数のグループ形式で行われました。
〔主な対象者〕
・労働組合の組合長
・中堅リーダー
・危険物または車両取扱者
・パート従業員
・障がいのある従業員
・産休復帰者
・外国人従業員 など
4.工場内確認
作業環境の安全性について、工場全体を巡回しながら細かく確認されます。
〔主な確認事項〕
・消火器の設置状況、間隔、期限
・避難経路、非常口表示
・フォークリフト駐車位置、動線の確保
・分電盤の感電注意表示
・騒音、照度基準の遵守
・巻き込み防止対策
・SDS(安全データシート)の保管
・危険箇所への表示 など
5.寮内確認
技能実習生・外国人労働者の居住環境について、実際に寮内を巡回し、確認が行われます。
〔主な確認事項〕
・男女別の居室区分
・鍵付きロッカーの有無
・トイレ、シャワー設備の有無
・十分な居住スペースの確保
・火災報知器、消火器等の設置と期限
組合としての所感
今回、3社のJASTI監査に立ち会った所感として、平常時から労働法令に沿った運用がなされていれば、監査はおおむね円滑に進み、各項目の重要度においても大きな問題は生じにくいと感じました。その一方で、工場内の巡回確認では、労働安全体制が適切に整備・運用されているかなど、監査内容は細部にまで及ぶものでした。
また、3社の監査を担当された各監査員によると、初回監査よりも更新時の監査の方が厳格になる傾向があり、過去の指摘事項に対して「どのように改善し、それを継続できているか」が重視されるとのことです。監査の進め方や確認内容については、経済産業省が策定した監査要求事項に沿って各監査員が対応するため、監査機関ごとに大きな違いはなく、おおむね共通の基準・流れで監査が行われている印象を受けました。
JASTI監査は単なる形式的な確認作業ではなく、企業経営や職場環境を見直し、より良い体制づくりにつなげる契機となり得る仕組みであると感じています。
「JASTI監査に関する説明会」開催のご案内
当組合では、一般財団法人カケンテストセンターのご協力のもと、「JASTI監査に関する説明会」を開催いたします。同センターは、多数の監査員が在籍しており、説明会の開催実績が豊富な機関です。
本説明会では、JASTI監査に向けた準備のポイントや手続きの要点などについて、実際に監査を担当する監査員が実務に即した内容を解説いたします。また、説明後には質疑応答の時間も設けています。
繊維業分野において特定技能制度の活用をご検討中の組合員企業の皆さまにおかれましては、この機会にぜひご参加ください。
【日時】2026年1月28日(水) 午後1時30分から午後3時30分まで(約2時間)
【講師】一般財団法人カケンテストセンター 岡橋 克二 様
【会場】エコ・プロジェクト協同組合 3階会議室