育成就労制度へのカウントダウン ― 今、受入れ企業が準備すべきこと
育成就労制度は、技能実習制度において指摘されてきた課題を大幅に修正したものとして、関係者の間では前向きに受け止められています。今後、適切な運用が実現すれば、受入れ企業にとっても、人材育成と経営力向上の両立を支える制度となることが期待されています。
育成就労制度の内容は、すでに全体の6~7割程度が明らかになった段階にあります。法律および関係省令はすでに公布され、2027年4月1日の施行も決定しています。残すところは具体的な運用を定める「運用要領」のみとなりました。
こうした状況を踏まえると、受入れ企業にとっては、制度の方向性を前提に準備を進める段階へ移行しているといえます。
本誌では、技能実習制度と異なる点を視点に、受入れ企業が今から準備しておくべき主なポイントを整理しました。育成就労制度のスタートに向けた対応の参考として、ぜひご活用ください。
育成就労制度に向けて、受入れ企業が準備すべき主なポイント
1)「職種・作業」から「特定産業分野・業務区分」へ
育成就労制度では、技能実習制度で用いられてきた「職種・作業」という枠組みは廃止され、特定産業分野ごとに定められた「業務区分」に基づく受入れとなります。
▶これにより、同一分野内であっても従事できる業務内容が明確化され、担当させる業務内容の整理や指導体制の再構築が求められます。
2)3年間を通じて「育成就労計画」に基づく運用が行われる
受入れ企業は、3年間を見据えた育成就労計画を策定し、その計画に沿って人材育成を行うことが求められます。
▶これにより、技能実習制度のような「段階的な技能移行」を前提とするのではなく、初期段階から将来像を意識した計画的な人材育成が前提となることへの社内周知が必要となります。
3)転職が可能となることで、「選ばれる職場づくり」が不可欠になる
育成就労制度では、1~2年の間に一定の要件のもとで本人の意思による転職が可能となり、今までのように「必ず在籍してくれる人」ではなくなります。
▶これにより、賃金や控除額、昇給賞与、職場環境、指導体制などの見直しを行い、受け入れた外国人材から選ばれる職場を目指す姿勢が必要となります。
4)特定技能1号評価試験に不合格の場合でも「1年の延長」が可能
育成就労期間中に特定技能1号評価試験を受験し、不合格となった場合であっても、一定の要件を満たせば最長1年間の育成就労期間の延長が認められます。
▶これにより、受入れ企業には育成状況の可視化や再挑戦を前提とした指導体制が求められます。
5)受入れ人数枠は「1号・2号」ではなく「3年間の総枠」で管理
技能実習制度では、常勤職員数に応じて1号・2号・3号ごとに人数枠が設定されていましたが、育成就労制度では、3年間を通じた総受入れ人数枠として管理されます。
なお、転職者として受け入れた者や、前号4)により延長した者は人数枠に含まれませんが、特定技能や他の在留資格の外国人は常勤職員数に含まれます(表1)。
6)大都市圏・地方、また受入れ企業・監理支援機関の優良性によって人数枠が変動
育成就労制度では、受入れ人数枠は一律ではなく、①受入れ企業のみが優良、②受入れ企業および監理支援機関が優良、③地方に住所がある、といった要件により、受入れ人数が加算されます(表1)。
▶これにより、受入れ戦略は短期ではなく、中長期的な人員計画として検討する必要が生じます。
■表1 監理型の人数枠
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常勤職員数 |
基本人数枠 |
① 基本人数枠の2倍 |
②+③ 基本人数枠の3倍 |
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301人以上 |
常勤職員数の15% |
常勤職員数の30% |
常勤職員数の45% |
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201人以上300人以下 |
45人 |
90人 |
135人 |
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101人以上200人以下 |
30人 |
60人 |
90人 |
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51人以上100人以下 |
18人 |
36人 |
54人 |
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41人以上50人以下 |
15人 |
30人 |
45人 |
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31人以上40人以下 |
12人 |
24人 |
36人 |
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9人以上30人以下 |
9人 |
18人 |
27人 |
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8人 |
9人 |
18人 |
24人 |
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7人 |
9人 |
18人 |
21人 |
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6人 |
9人 |
18人 |
19人 |
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5人 |
9人 |
15人 |
16人 |
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4人 |
9人 |
12人 |
13人 |
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3人 |
9人 |
10人 |
11人 |
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2人 |
6人 |
7人 |
8人 |
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1人 |
3人 |
4人 |
5人 |
資料:出入国在留管理庁、厚生労働省「育成就労制度の関係省令等について」(2025年9月30日公表)をもとに作成。
7)必須業務への従事割合が「1/2以上」から「1/3以上」へ
育成就労制度では、育成就労計画における必須業務への従事割合が「全体の2分の1以上」から「全体の3分の1以上」へと変更されます。
▶これにより、必須業務への縛りは緩和されますが、特定技能1号評価試験の内容に沿った業務配置であるかどうかが、より重視されることとなります。
8)1年目の基礎級・初級試験は「受験義務あり・合格は必須ではない」
育成就労1年目には、基礎級・初級に相当する技能評価試験の受験義務が課されますが、不合格であっても直ちに在留資格に影響するものではありません。
▶これにより、試験は育成状況を把握するための位置づけとなりますが、受入れ企業の優良要件の評価項目としても加算対象となるため、合格目標を外国人材と共有し試験対策を行なう必要があります。
9)入国前に日本語A1(N5)が未取得の場合、「A1相当講習」100時間以上が必要
入国時点で日本語能力A1(N5)に合格していない場合、入国前後に100時間以上の「A1相当講習」を実施する必要があります。
▶これにより、入国後は一定の日本語力が担保される一方、送出機関や監理団体による入国前の日本語教育体制の確認・整備が、従来以上に重要となります。
10)3年間でA2(N4)が未取得の場合、「A2目標講習」100時間以上が必要
育成就労期間の終了時点で、日本語能力A1(N4)に合格していない場合、追加で100時間以上の「A2目標講習」を実施する必要があります。
▶これにより、日本語習得は本人任せではなく、受入れ企業または監理団体が関与・支援する体制構築が求められます。
11)育成就労指導員・生活指導員は「養成講習の受講」が必須
技能実習制度では、技能実習指導員のみ政府指定機関の養成講習が義務化されていましたが、育成就労制度では、育成就労指導員および生活指導員についても、3年以内に1回、政府指定機関の養成講習を受講していることが要件となります。
▶これにより、指導者の役割と責任が明確化され、社内の指導・支援体制の再点検が必要となります。
12)過去1年以内に「会社都合による解雇」がある場合は受入れ不可
受入れ企業は、過去1年以内に会社都合による解雇者を出していないことが要件となります。これは、技能実習制度にはなかった規定です。育成就労制度では、「人材確保」ではなく「人材育成」を目的とする制度であることを明確に示しています。