「特定技能2号」への挑戦 ―― 2号専用試験と技能検定の特徴を解説
「特定技能2号」の在留資格を取得するためには、表1のとおり、①特定技能2号専用の試験(評価試験または測定試験)の合格のほか、5つの分野に限っては、②技能検定の合格でも代用できます。
しかし、2号専用試験は出題範囲が広いため、難易度が高い傾向にあります。例えば表2では、建設分野の合格率はわずか9.5%(※1)にとどまる一方で、表3の技能検定1級の合格率は、とび58.8%、鉄筋施工55.3%、型枠施工60.8%など(日本人を含む、※2)と、相対的に高い合格率となっています。
表1 特定技能2号移行に係る試験ルート(抜粋)
分野 |
特定技能2号の技能水準を確認する試験等(①②のいずれか) |
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①2号専用試験 |
②技能検定 |
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工業製品製造業 |
2号評価試験、ビジネス・キャリア検定3級 |
技能検定1級〈鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、仕上げ、機械検査、機械保全、電子機器組立て、電気機器組立て、プラスチック成形、塗装、工業包装等〉 |
建設 |
2号評価試験 |
技能検定1級〈型枠施工、コンクリート圧送施工、鉄筋施工、内装仕上げ施工、とび、建築大工、建築板金、石材施工、タイル張り、鉄工、塗装、防水施工等〉 |
造船・舶用工業 |
2号評価試験 |
技能検定1級〈塗装、鉄工、機械加工等〉 |
自動車整備 |
2号評価試験 |
技能検定2級〈自動車整備士〉 |
宿泊 |
2号評価試験 |
- |
農業 |
2号測定試験3 |
- |
飲食料品製造 |
2号測定試験 |
- |
外食業 |
2号測定試験、日本語能力試験N3以上 |
- |
表2 特定技能2号専用試験の合格率(工業製品製造分野、建設分野)
技能水準を確認する試験等 |
工業製品製造分野 |
建設分野 |
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2号評価試験 |
受験者数 |
624人 |
1,263人 |
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合格者数 |
325人 |
120人 |
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合格率 |
52.0% |
9.5% |
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ビジネス・キャリア検定3級 |
区分 |
生産管理プランニング |
生産管理オペレーション |
- |
受験者数 |
639人 |
705人 |
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合格者数 |
387人 |
445人 |
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合格率 |
60.5% |
63.1% |
表3 技能検定1級の合格率(工業製品製造分野、建設分野)
職種 | 受検申請者数 | 合格者数 | 合格率 |
鋳造 | 2,791 | 1,745 | 62.5% |
機械加工 | 18,439 | 10,965 | 59.4% |
鉄工 | 4,069 | 2,355 | 57.8% |
工場板金 | 3,708 | 2,201 | 59.3% |
ダイカスト | 1,570 | 977 | 62.2% |
プラスチック成形 | 16,169 | 8,718 | 53.9% |
とび | 18,942 | 11,142 | 58.8% |
鉄筋施工 | 8,008 | 4,431 | 55.3% |
型枠施工 | 7,705 | 4,658 | 60.8% |
コンクリート圧送施工 | 852 | 542 | 63.6% |
塗装 | 14,378 | 7,647 | 53.1% |
工業包装 | 8,373 | 5,545 | 66.2% |
キャリアパス支援の取り組み
2024年3月、政府は既存の工業製品製造業分野において、陶磁器製品製造や紡織製品製造など7区分を新たに追加しました。これらの業務区分は現時点では「特定技能2号」への移行が認められていませんが、今後、既存の業種と同様に対象が拡大される可能性が高いと考えられます。
技能検定は職種ごとの専門性に特化し、技能実習1年目から基礎級を受検できるため、受検者にとって馴染みやすい試験といえます。しかし課題もあります。技能検定1級の受検資格には、「実務経験のみで7年経過後」または「2級に合格してから2年経過後」といった条件が課されており、これにより、従来5年間の運用であった技能実習制度に比べ、3年間の運用となる育成就労制度では、実務経験年数が不足するケースが発生する可能性があります。
どの試験を目標とするかについては、試験の実施時期や本人の希望を考慮して検討していくことが重要です。当組合では、特定技能2号の取得を目指す外国人材のキャリアパスを支援するため、個別のご相談を承っております。詳細は事務局までお気軽にお問い合わせください。
※1 外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(令和6年9月30日、出入国在留管理庁更新)参照
※2 令和5年度「技能検定」の実施状況(令和6年7月26日、厚生労働省公表)参照